過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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茶の世界 - 日本の旅(4)

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容子の茶室
米子市旗ケ崎


容子の家には茶室が2つある。
1つはこの屋敷が建てられた時に北の端に造られた4畳半の茶室で、障子の外には荒れ庭が広がり、朝の数時間だけ陽が射すこの茶室はほとんど1日中薄暗くてひっそりとしている。 谷崎潤一郎の 『陰翳礼讃』 をそのまま再現したような趣のあるこの空間を僕は好きで、この屋敷に滞在するたびに1日に1度はそっとここへ忍び込んで、ひとりでぽつねんとする習慣があることを、ここの屋敷の主人は知らないに違いない。

そして容子の2つ目の茶室がこの写真。
もともと客間として使われていた十畳間を、裏千家の師匠である容子が大きな茶会をやるための茶室に改造された。 縁側の障子にふんだんに陽があたり、障子を開けるとそこには庭が広がっていて、すぐ眼の前に今回のクイズとなった杏の樹がある。
この部屋はふだんいろいろな目的に使われる。 洋式の応接間を使わない時はここが客間となったり、すぐ隣が台所だから宴会にはもってこいで、たまにしか帰国しない僕を迎えて多勢の友人たちが集まってくれるのもこの部屋だった。 宴会のあと、車で来た来客が酔っ払って帰宅を諦めて、押し入れから出した布団を並べて、男も女もいっしょにそのまま雑魚寝するのもこの部屋である。 ここでの大宴会のことは以前の記事 『酒池肉林の夜』 に書いたことがある。


実はこの2つの茶室の他に容子はもう1つ茶室を持っている。
国立公園大山の山中に建てた山荘がそれで、ここは茶室としてはたまにしか使われることはないようだが、宴会の会場としては僕も何度も来ている。 10年ほど前まではこの山荘は深い雑木林にポツンと囲まれてひっそりとしていたのに、いつの間にか周りに次々と別荘が建ち、すぐ隣にテニスコートまでできてしまった。

3つの茶室を所有する日本人なんてそんなに多くはいないだろうが、どんな気分なんだろうと考えてしまう。 例えばとことん俗人である僕が、マセラーティとランドローバーと日産GTR の3台を車庫に持っているような感じだろうか?

茶の世界、なんてタイトルを書いたけど僕など覗いたこともないようなまったくの別世界に思える。
ただ、江戸時代から茶道が盛んであったこの山陰地方では、それほど遠くの別世界でもないようだ。 子供の頃、友達の家へ遊びに行くとそこのお祖母ちゃんがよく抹茶をたててくれたが、こちらの狙いはお茶よりもそれについて出るお菓子だったのはもちろんである。 現在でも郷里に帰って他家を訪問すると出されるのは抹茶が多い。 作法も何も知らない僕はただがぶりと飲むだけなのに、そんなことを気にしないところが茶の世界なんだろうと思う。 大切なのは主と客の心の通じ合いだ。 ということである。







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コメント:

*

ああ何て素敵な空間!
着なれた風の着物を着てひっそりとここに座る私を想像する。
コラ!笑ったのは誰だ?
まぁ実際はソファーに寝転んでだらしなく本を読んでて、
その本が落ちる音で夢から覚めるなんて暮らしなんだけどさ。

これでも高校の部活は茶道部だったのよん。
お手前までいかないうち辞めちゃったのが悔やまれる。
でもね、茶室に一番似合うのって男の人だと私は思う。
凛々しくて惚れてしまいそう~~~ ううう。
2017/05/20 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

*

>ムーさん
「本が落ちる音で夢から覚める」なんて、すごく優雅な生活み感じるけどなぁ。でも着物と茶室なんて雰囲気も実際似合いそうだけど。

>September30さま
松江って昔からお茶とは縁の深い土地柄なんですね。今でもお茶の消費量はかなり高いそうですし、日常生活に茶の湯文化が根付いているとはネットで知りました。

鳥取、島根は太平洋側の広島や岡山とはお隣なのに、雰囲気は随分違うし、石川県とも随分違う印象ですけど、そんな茶の湯文化の影響もあるのかなぁとぼんやり思いました。
2017/05/20 [川越] URL #uvrEXygI [編集] 

*

川越さん
茶室にスカートだと足がにゅっと出てサマにならないんですよー。
正座してた畳の跡が付いてる足が目の前を歩くのってイヤじゃないですか?(笑)
2017/05/20 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

*

もう20年以上前ですが、日吉の茶陶の工房に通っておりました。
年に一回、吉兆におろしている先生の本物の茶道具と一緒に生徒さんたちの茶道具を使って、陶芸の工房の隣の茶室でお茶の会が催されました。
日吉の駅から近い場所なのですが都会とは思えないような趣のある場所だったのを覚えております。
私、お茶は習った事ないんです。
だからSeptemberさんと同様ですが、その時はお隣の方の真似をして、それ風に飲みましたけど。

先生はその後工房をたたんで熱海の方に引きこもってしまわれ、あの茶室ももうありません。

でも、その日吉の加藤土師萌ゆかりの茶室も凛とした容子さんの茶室には全く足元にも及びません。(もしかして、Septemberさんの写真の素晴らしさもあるのかしら?)

他家を訪問すると抹茶が多いというのも、全く初耳です。

都会でバタバタ暮らす私たちにないそんな暮らしが山陰でひっそりと息づいているのでしょうか。
Septemberさんの熱望する日本はここかも、と納得!
2017/05/20 [みんURL #6moyDOY6 [編集] 

* Re: タイトルなし

ムーさんが惚れるという、茶室に似合う男というのは
ピシッと着物を着て背筋をまっすぐに伸ばし
端然と正座できる男なのだろうね。
僕なんかジーンズの脚を前に投げ出して両膝を抱え
その膝の上に猫背の背をさらに丸くして顎を載せる、という形だから
どうみても日本趣味を持つアメリカ人という様になっちゃう。(笑)

2017/05/20 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: タイトルなし

川越さん

そうそう
むかし出雲松江藩の藩主であった松平治郷(はるさと)は江戸時代の代表的茶人のひとりで
不昧公(ふまいこう)として町人にも大いに茶を勧めたらしい。
(彼の墓がある月照寺は、僕がデートで女の子を連れて回るコースの1つだったのを思い出した。)

それにくらべると
お隣の米子の町はそんなおっとりとした松江とは違って
ガサガサした商売の土地だったからそれだけに金持ちの商人などがカッコつけて
お茶をやったのかも知れませんね。
2017/05/20 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: タイトルなし

ムーさん

畳の跡が付いている足、というのに吹き出してしまう。

それで思い出したのは
昔々、誘惑した女の衣服を剥ぎ取りながらふと見ると
ストッキングから数本の長い毛がニューっと出ているのに気がついて
やる気がすっかり削がれてしまったこと。
2017/05/20 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

>September30さま
わはは、長い毛というのは経験ないと思うけど、その気持ちはよくわかります。でもそう考えてみると男の「やる気」なんてもんは吹けば飛ぶような儚いものなんだなぁという気がします。まっ、これは人によるのかもしれませんが。

で、自分の場合を振り返ると、スカートを下ろした彼女のパンティの縁が随分使い込んで擦り切れかかっているのが目に入って、やっぱりその気が霧散したことがありました。彼女のお気に入りのパンティだったのかもしれないとは、随分あとになって思いました。

>ムーさん
「畳の跡が付いている足」っていう表現がやっぱり妙にリアルで、現実的な女性の真の姿を見た思いです。やっぱり女って幻想の世界には生きていないんですよね。というか、本音とタテマエのように二面性があるのかな。その点男はいつまで経っても学習できず、女に夢を追い続けちゃうんだよなぁ。
2017/05/20 [川越] URL #uvrEXygI [編集] 

* Re: タイトルなし

みんさん

そう、僕の郷里では来客に抹茶(薄茶とも呼ばれる)を出す習慣があったのに
今の生活では新世代の住民の間にそれがどこまで残っているのかは疑問だね。

米子で、先だって亡くなったコータローを仏前に訪ねた時も
表千家の茶のお師匠さんである奥さんが(なぜか僕の周りには茶や花や長唄のお師匠さんが多い)
目の前で薄茶を立ててくれて、茶菓子の代わりに出てきたのはなんと僕の好物のお汁粉であったのだ!
僕が回帰したい日本とはそんな世界、つまり古き良き昭和の日本なんだろうなあ。

無理だよねえ。


2017/05/21 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: タイトルなし

川越さん

女には本音とタテマエの2面性があるのに対して
男はいつまで経っても学習できず女に夢を置い続ける
とはまさに名言。

ストッキングから飛び出した毛にしても擦り切れた下着にしても
女から見ればまるで幼児のわがままとしかうつらない。

ある女性が僕に言ったことがあります。
惚れてしまった男というのは自分の産んだ赤ん坊と同じで
どんな欠点があろうと許してしまう。
これを聞いたときに
ああ男は未来永劫、女には敵わないと納得しました。

僕は 『女性崇拝教』 の元祖を自認してるんだけど
改めて川越さんをバイス元祖に指名したい。(笑)
2017/05/21 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

*

September30さんと川越さんのやりとりを聞いてて、
「あーそうなのか」と「えーそうなのか?」です。
女に二面性があるからこそ男は都合の良い方に惚れることができるんでしょう?
有り難いと思いなさいね。

男は精神面に二面性があると私は思う。
社会的な部分とごく個人的な部分。
茶室で凛々しいのは社会性を見せてる時だし、
女の前で情けないボロを出すのは安心して内面をさらした時。
女は自分だけにその両方を見せる男に惚れる。

けど、産んだ赤ん坊と同じだなんてありえない。
欠点を許せるのは惚れてる時限定です(笑)

そういえば以前、弟子丸さんに言われました。
「アバタもえくぼだね」って。
そのころ好きだった(今でも好きですが死んでしまった)人の事。
男はえくぼの時代を恋という(少なくとも弟子丸さんは)
私はアバタはアバタのまま好きなんだよーだ。

男は都合のいい部分の女しか要らないのかもね。
と、改めて知った次第です。
だから次々と女漁りをするんでしょ。
そうでしょ(笑)






2017/05/21 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

*

私、ムーさんに一票!
夢幻のまんまで置いといて欲しいのは、オトコのエゴ?
それを可愛がりたい部分もありますけど。
男と女の間には、暗くて深い河があるんです。
でもあっていいのかもね。
私、ムーさんと飲みたい!
2017/05/21 [みんURL #6moyDOY6 [編集] 

*

おっ!一票いただきました。
女性票なのはあたりまえ(笑)

みんさん!ラブコール嬉しいな。
みんさんもたくさんの恋をしてきたんだね。
墓場まで持っていく秘密もね。
抱えた荷物が重い時もあるけど、
なにも無かった人生よりずっと豊か(だと思いたい)
分け合うものがある人と女子会するのっていいかもー。
2017/05/22 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

*

ムーさんとみんさんのコメントを読んで一晩。最初に思ったのは女性と議論(言い合いを含む)しても絶対に勝てないよなぁってこと。それと「男」を敵に回した時の「女」の団結力。

というのはとりあえず横に置いといて、男の精神的二面性というのはなるほどなぁと思い、それは確かにあるかもしれないと思います。それはきっとかつての家長制度の名残のようなもので、きっとあと半世紀もすれば消えてしまうようなもんじゃないかとも思ったり。

でもそんな一面に惚れるのが女だすれば、その頃には女に身も心も全て投げ出して惚れられる男がいなくなるってことにもなりそうで、そうなるとアバタはしっかりアバタになってしまうんでしょうね。今でもそんな雰囲気が垣間見られる気はしますが。

都合のいい部分の女しか要らないってのも心当たりはあるかも。(^^; だって女っていつの間にかすっかり変わってしまうし。まぁ、これはお互い様なんだろうけど。

で、みんさんの言う「深い河」という言葉は野坂の歌にもありましたが、男の側から言うと男と女の間にあるのはそんな生易しいものじゃなくて、そちら側は全く見えない決して超えることのできない壁のようなものという感じです。

最近はドローンなんてものがあるので、上空から雰囲気だけ探るくらいはできそうですが、それこそ絵に描いた餅状態。なんにしても男は女の手の内で踊るばかりで、これはもう完全な白旗宣言みたいなもんです。

ああっ、すみません。せっかくSeptember30さんにバイス元祖を指名されたのに、ボスの指示も待たずに戦線離脱、白旗あげちゃいました。(^^;
2017/05/22 [川越] URL #uvrEXygI [編集] 

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2017/05/23 []  # 

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