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過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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September30

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盂蘭盆会 (うらぼんえ) 2

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山門





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天蓋





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本堂





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位牌堂





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地蔵





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水木しげる




さて今日は8月の14日、お盆の2日目である。
朝から女性陣がきのうと同じく仏前の膳をこしらえたり、われわれ自身の朝食を準備する中で、僕はいつものように自分の数少ない仕事の1つであるコーヒーを淹れる。
今回の帰国でアメリカから新しいステンレス製のフレンチプレスをわざわざ持参したのは、うまいコーヒーを自分が飲みたかったからだが、ここに来てみると龍子さんも他の女性達もみんながコーヒー党だとわかった。 いつもは毎朝ドリップコーヒーを飲むという彼女達が、僕の淹れたフレンチプレスのコーヒーを 「わー美味しい!」 と 賞賛してくれたのは嬉しかったが、わずか3杯しか作れないこのフレンチプレスではたて続けに2度淹れなければならなかった。

さて今日は午前中は寺参りをすることになっていた。
この寺は車で5分の所にある。 考えてみれば日本で寺院の門をくぐるのは50年振りになる。 まず庫裏の方の玄関を開けて声を掛けると出てきた若い方丈さんにお布施を預ける。 それから強い香の匂いに満ちた本堂へ上がって参拝したあと、裏手の位牌堂へ回って代々のY家の仏前の水や花を取り替える。 ここについ最近参加したばかりの叔母の真新しい位牌もそこにあった。

そのあと寺院の境内を歩く。
建築物が大きな割に墓の敷地が意外と小さいのは、このあたりは墓を寺にではなくて自宅の近くに持つ檀家が多いからに違いなかった。 叔母の入った墓のように。
驚いたのは水木しげるのこれは墓ではなくて記念碑が境内に建てられていた。 漁業だけに頼っていた古い境港の町は、水木しげる旋風とゲゲゲの鬼太郎政策で様相を一新してしまった。 全国から来る観光客のお陰で町の経済がとたんに潤ってしまったのは良いことには違いないが、明治の昔からある電車の駅など古い名前を、10年ほど前に全部鬼太郎のキャラクターに変えてしまった。 余子(あまりこ)駅が子なきじじい駅に、後藤駅がどろたぼう駅に、三本松口駅がそでひき小僧駅、というぐあいである。 ずっと以前に叔母を訪ねて子なきじじい駅に降り立った僕がこれはやり過ぎだと憤慨したのを覚えているが、今回同じ駅に行ってみたらちゃんと昔の名前に戻されていたので安心した。 何事もやり過ぎはいけない。


寺参りのあとは家に帰って軽い昼食をとり、そのあと女性連は親類の寺や墓を車で6か所も回る予定らしかったが、僕には直接は関係ないということでそれは免除となる。 その代わり留守番という役を仰せつかった。 人が仏を訪ねてくるのに留守ではまずい。 ちゃんと座敷に上げて仏間へ案内すること、来客が線香を上げている時は神妙に後ろに正座していること、ちゃんとお茶とお菓子を出すこと、お帰りの時には仏前返しの引き出物をお渡しすること、引き出物は2種類用意してあって故人と親しかった人にはこのお茶の包、遠い親類や近所など通り一遍の客にはこちらの蕎麦の包、とちゃんと区別がされてある。 客が故人と親しかったかどうか僕なんかに判別できるわけがないのに、と思ったのは余計な心配だとあとでわかった。

玄関のベルが鳴るので出て見た時に、たいていの来客が僕を見てちょっとびっくりしているのがわかる。 この家を訪ねて男性が出てきたことなど長いあいだ無かったからである。 それに葬式の時にも僕の顔を見ていないわけだし。
「私は故人の甥です」 と自己紹介をする。
「ああ、あのアメリカの…」 とすぐに大きく頷く客は生前の叔母が親しくして僕のことを話していたからに違いない。 これはまちがいなくお茶組だ。
「はあ?」 とわからないような顔をするのはこれはもう蕎麦組と決めた。
蕎麦組のある中年の夫婦など
「甥子さんと言いなったけどどこから来なさったです?」 と尋ねたので
「アメリカです」 と答えたら二人で声に出して笑われた。
冗談だと思ったらしい。


夕方になって女性達が帰宅するとそのまま叔母の墓参りをする。
石灯籠に灯をともし花の水を換え砂をきれいに掃いて線香を立てるのはきのうと同じ。 女性達が今日1日の訪問先のことを声に出して叔母に報告するのを聞きながら僕も手を合わせる。
こうして盆の2日めが終わった。

(続)





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コメント:

*

鬼太郎の駅名は以前ニュースで見ましたが、お金のためとはいえひどいことになったもんだと思いましたが、元に戻っていたんですね。そちらのニュースは見逃しましたが、何でもかんでも町や地名を変えてしまうのは困ったものです。とはいえ、現実的な困りごとがあるわけではないのですが、その地の歴史を否定するような行為と思ってしまいます。まずはめでたしですね。
2017/09/10 [川越] URL #uvrEXygI [編集] 

*

今年の夏も父からメールがあり、お墓の掃除とお参りが無事終わったことが書いてありました。父はお墓が大好きなんです。大好きな母がそこにも入っているから,お盆じゃなくても、週1くらいできっとお墓には通ってるはず。

お盆の行事、小さいころ私も少し参加していましたが、
鳥取出身の母が、福井の慣習は違うから困るとたくさんの慣習の本を買って研究してたのを思いました。
こうやってお話を聞くだけでも、september30さん地元は、とても丁寧にお盆の行事がなされるのですね。
今になって、そのころの母のボヤキが理解できました。

それにしてもお盆のあと、掃除をしてお墓を回ってお坊さんのお話を聞いて、一日中出歩いたあと、家に帰って夜ご飯を食べるときに、母と一緒に、はあーやっと終わってスッキリしたねーと言ってたのを思い出します。
なんなんでしょうね、この義務感というか、やらないと罪悪感というか。
海外に住み始めてからは、そんな感覚も薄れてきてしまってますが・・・


2017/09/10 [inei-reisan] URL #pNQOf01M [編集] 

*

田舎へ行くと仏間のお仏壇の立派さ大きさに驚きます。
家の中が案外雑然としていても仏間はきちんと整えられている。
我が家と言えば納戸兼書庫兼着物箪笥部屋のような部屋の、
本棚の中にちんまり小さな仏壇が。
お線香は一応毎日あげるけどお水が乾いていたり線香立の灰が詰まっていたり。
まぁひどい扱いと言えばそうのとおりです。
うちの婆ちゃんの口癖は「仏ほっとけ」でした。
生きてるものが大事。アンタたちは忙しいんだからそれでいいよ。
ということらしかった。
儀式とは無縁の暮らしにすっかり慣れてしまい、、
September30さんのところのように、
先祖の供養を厳粛に行う地方と名家というものがあるのだなーと、
物語か映画を見るような気がしました。

ところで私はお線香やお香の匂いが好きです。
インドのお香みたいな食欲を失くす匂いじゃなく、
湿度の高い夏に上等のお香を炊くとああ日本人なんだと思う。
そういう世代も私のあたりで終わってしまうんでしょうが。
2017/09/11 [ムー] URL #qiVfkayw [編集] 

* Re: タイトルなし

川越さん

この境港線という電車は米子駅と弓ヶ浜半島の先端にある境港駅のあいだを走る
典型的なローカル路線で利用者の大半は高校生か高齢者。
高校生はどうか知らないけど、駅名が変わった時に地元の高齢者層から強烈な批判が出てきたのは
大いに頷けます。

商店へ行けばなんでもかんでも鬼太郎尽くしで
鬼太郎菓子、鬼太郎煎餅、鬼太郎団子、鬼太郎餅。
商品だけじゃなくてたとえばイベントも
鬼太郎コンサート、鬼太郎レース、鬼太郎祭り、鬼太郎ツアーなど1年中何かをやっている。

僕など隣の米子から来たよそ者だから何も言う資格はないんだけど
いいかげんうんざりでした。



2017/09/11 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: タイトルなし

inei-reisan さん

僕のとんでもない覚えまちがいかもしれないけど
あなたは若い頃お父様と反りが合わなかったようなことを以前に書いていたような気がする。
そのお父様のことをこんな暖かい筆致で書けるようになったんだなあ
と勝手に感激しました。

逝った妻の墓に毎週会いに行くというお父様を
僕にはまずできないだろうと、羨ましくもあり口惜しくもあります。

そのお母様のことを僕の記事から思い出してもらえたのは嬉しいです。
2017/09/13 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

* Re: タイトルなし

ムーさん

亡くなった叔母の家には実は仏壇が2つあって
それぞれ別の部屋に位牌が安置されている。
つまりこの家には仏間が二間あるわけ。
1つはもちろん今回叔母が入っていったY家の仏壇で
もう1つは叔母の母や祖父母の位牌を置いたM家の仏壇です。

Y家のそれは長女の龍子さんがこれから面倒を見ることになるとして
M家の方は僕が唯一の血縁者なのにアメリカに住む僕にはどうしようもなくて
これは改めて永代供養をしてもらうことにした。
それで盆明けのある日、幾つかの位牌を風呂敷に包んで米子市のM家の寺を訪れた。
住職が言う。 
長いあいだいつもきちんとお墓参りをしてこられたのに
今年の盆には姿が見えなかったと思ったら、亡くなられたということを
他の壇家の人達から聞きました。
わかりました。お位牌はお預かりします。
改めて墓の始末にかかる費用や永代供養の料金などを見積もりとしてお送りします。
それで僕もほっとして寺を出てきた。


線香の匂いは僕も大好きだよ。
普段の生活で香を焚くのが好きな女房もなぜか日本の線香が好きでよく焚いてるんだけど
あの匂いにまつわる感慨や記憶は僕にしかわからない。
いわば日本人の証(あかし)のようなもの。





2017/09/13 [September30] URL #MAyMKToE [編集] 

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