過ぎたこと、過ぎて行くこと  by September30

アメリカに長く暮らしながら日本やヨーロッパを周る著者が、写真と文章と音楽で綴る随筆のようなもの

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煙草を嫌いになる薬

160425

煙草の煙
Japan 2002



今年の3月頃、声が出難くなって話をするのが辛いので耳鼻咽喉科の医者に診てもらった。
先端にカメラを装備した細い管を鼻の穴から喉へ通すと、目の前のモニターに喉の内部のクロースアップが大きく拡大されて映っている。 驚くほど鮮明なそのピンク色の映像は色彩があまりにも鮮やかすぎて、見ていてあまり気持ちの良いものではない。 そこに映っている深海のイソギンチャクのような形をしたのが僕の声帯で、声を出すたびにそのイソギンチャクが開いたり閉じたりする。 声帯の両側に数個の白いデキモノが見られる。 それが声を出すのを阻んでいるのだと医者が説明してくれた。
医者が言うにはこのデキモノはディスプラジアと呼ばれる異形成で、同じ異形成でもポリープよりは悪質で癌に進行する可能性がポリープよりは高いそうだ。 現在すでに癌になっているかどうかをすぐにでもバイオプシー(生検)をする必要がある。 そのついでに全部切り取ってしまおう、と医者が言った。

その喉の手術をしたのは3月の終りで、4月に日本への帰国を予定していたわずか1週間前だった。 手術をしたとたんに声が出やすくなっていた。 そして検査の結果は癌ではないとわかったが、このデキモノは再発する可能性が多い。 6ヶ月後に検診に来いと医者に言われた。

そしてつい2週間前、6ヶ月後の9月の終りにまた診療所へ行って鼻からカメラの管を通して喉を見ると…
毒々しいピンク色の声帯の両側に、うっすらと白色の霜のようなものが付着していた。 ディスプラジアの初期の状態である。 バイオプシーをやるには早すぎるので3ヶ月待ってもう1度見てみよう、と医者が言った。 そして最後に付け加えるように 「ところで煙草は止めたんでしょうね?」 と念を押す。 「いや、止めてない」 と答えると、フットボールの選手みたいに体格のよいその医者が口調を変えて説得を始めた。
この喉のデキモノが成長する段階で、煙草がそれを助長するという確固とした研究結果が出ているわけじゃないが、煙草を止めることで食餌療法や薬品以上にディスプラジアの予防効果があるという例はかなり出ている。 知っているように煙草は百害あって一利なしだから、この際思い切って止めたらどうですか? あなたの話では今までいろんな方法を試みて成功しなかったということだけど、最近評判になっている新薬があって成功率もかなり高い。 家に帰ってこれを読んで考えてみてください。 と言ってパンフレットを手渡してくれた。


(続)




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